2012年6月4日月曜日

カルシウム摂取量と高血圧


たばこ産業 塩専売版  1995.09.25

「塩と健康の科学」シリーズ

(財)ソルト・サイエンス研究財団研究参与

橋本壽夫

カルシウム摂取量と高血圧

 日本人はカルシウムの摂取量が少ないので、特に女性で骨租軽症を起こさないために摂取量を多くするようにいわれている。ところで、カルシウムの摂取量は血圧にも影響を与え、カルシウム摂取量が少ないと高血圧になるともいわれているが、本当にそうなのであろうか。1994年に「カルシウムと高血圧の関係に関する科学的事実の評価」が発表されたので、その概要を紹介する。


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背 景
 アメリカでは保健政策の一環として慢性疾患における栄養素の役割をいくつかの報告書で述べているが、いずれも1988年以前の文献に基づいている。それらの報告書の中でカルシウムについては次のように要約されている。
 「低カルシウム摂取量は頻繁な骨折と、多分、高血圧とも関係しているが、骨租懲症や高血圧を予防するための推奨摂取量以上のカルシウム摂取量の効果はあまり研究されておらず、カルシウム補給剤の使用を正当化していない」「カルシウム摂取量の増加が高血圧の危険率を減らすという仮説を確かめるための十分な臨床試験はされていない」「カルシウム摂取量の低下と高血圧との関係は暗示的ではあるが結論づけられていない」
 そして、公衆衛生局長官の見解は「これまでの事実から、細胞内カルシウム代謝の乱れが高血圧と関係しているらしいが、生理的機構は不明である� ��血圧調整におけるカルシウムの役割は不確定で、臨床的な事実からは結論づけられない」ということであった。
 乳製品工業組合は最近の状況を知るために、アメリカ科学者同盟の生命科学研究所に依頼して、この報告書を作成した。報告書には1987年から1993年までに発表された約100件の論文の内容が要約されている。


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カルシウム摂取量と高血圧の臨床研究
 カルシウムが血圧を制御する上でどのような働きをするかについて、多くの臨床研究の結果が検討された。臨床的な観察は血圧の生理とそれに関与するカルシウムの役割にいくらか光をさしたが、確定的な証拠を見出せない。カルシウムと高血圧の関係の複雑さと、食事の間題に影響を及ぼす因子をコントロールする研究の難しさが認識された。

カルシウム摂取量と高血圧の疫学研究
 カルシウム摂取量と高血圧との逆相関がしばしば報告されるが、それとは矛盾する結果もしばしば報告され、決定的な結論を出せない。このような矛盾した結果をもたらす問題の一つはカルシウム摂取量の測定法にある。ナトリウム排泄量と違って、尿中のカルシウム排泄量はカルシウム摂取量を表しているとはいえない。カルシウム摂取量と血庄制御についてもっとも強い関係は低カルシウム摂取量の集団における調査でみられた。しかし、それらの報告から引き出される結論は調査項目、調査法、被験者の採用法に一貫性がないので弱く、カルシウム摂取量と高血圧との決定的な関係を示されない。


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カルシウム摂取量と高血圧の介入研究
 カルシウムの補給剤を投与したり、食品からカルシウムを補給する介入試験はいくつもあるが、介入試験の設計や方法が違うため、一貫した結論を出せない。

カルシウムとナトリウムの相互作用
 カルシウム補給はナトリウムの尿中排椎を促進する。通常の食事にカルシウムを補給すると、最低血圧は変わらなかったが、最高血圧が低下し、尿中にナトリウムが多く排泄された。また、食塩感受性の人にカルシウムを補給すると、動脈の平均血圧が下がった。食塩摂取量が多く、カルシウム摂取量が少ない食事を習慣的に食べている人では、カルシウム補給が有効に働くようである。

妊娠時の高血圧とカルシウム補給
 妊娠した時の高血圧者にカルシウム剤を投与した介入試験でも、一般的な集団で行われた試験と同じような設計的な欠陥がある。それにもかかわらず、長期的に低カルシウムであった被験者では、カルシウム補給量が多くても少なくても血圧低下の効果があった。しかし、カルシウムが妊娠中の血圧制御に及ぼす影響の機構は不明である。


要 約
 妊娠でなる高血圧のような特別な生理的条件下では、カルシウム補給の影響を示せるが、その他の場合では結果は一貫しておらず、カルシウム補給の効果は否定的であった。カルシウム欠乏が高血圧の原因となるという意見を支持する十分な証拠は現在のところない。カルシウムの効果は食塩に対する感受性と関連して高血圧に関係しているのかもしれない。
 カルシウムの豊富な食品、特に乳製品の摂取量が高いと高血圧になりにくいという事実がある。しかし、この効果がカルシウムだけによるものか、または血圧の制御に関係する他の陽イオンとの相互作用によるものかについては不明である。介入試験に一貫性がなかったことから、現時点では高血圧の予防法または治療法としてカル� ��ウム補給剤の使用を推奨できない。
 以上の概要はこれまでアメリカで発表されてきた結論と一致しており、特に、カルシウム摂取量が1日推奨摂取量以下である妊婦はカルシウム摂取量を増加させるべきであるとしている。カルシウム摂取量と高血圧との関係は現在まだ不明確な状況である。



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